サーバーから開発環境まで:CentOSが支えたITインフラの進化(第3回)

企業運用とCentOSの役割

エンタープライズ向けのITインフラを構築する際、企業は高い安定性と信頼性を求めます。しかし、これらを実現するためにはコストやスキルが大きな課題となる場合が少なくありません。そんな中で、CentOSはエンタープライズ級の性能を無償で提供し、特に中小企業やスタートアップにとって頼れる存在として定着しました。今回は、CentOSが企業運用にどのような影響を与えたのか、サーバー運用や開発環境での役割を中心に解説します。

企業が求めた安定性と信頼性

エンタープライズ環境でのシステム運用において、安定性と信頼性は欠かせません。特に中小企業やスタートアップにとっては、大企業ほどのIT予算を確保できない中で、コスト効率の高いシステムが求められます。CentOSは、そのニーズに対して最適な選択肢として登場しました。

Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンとして開発されたCentOSは、RHELの安定性と信頼性をそのまま引き継ぎながら、無償で提供されました。これは、企業がライセンス料に縛られることなく、エンタープライズ級のシステムを構築できることを意味します。また、商用サポートが必要な場合は、必要に応じてRHELに切り替えることも可能であり、この柔軟性が多くの企業に支持される理由となりました。

サーバー運用の基盤としての役割

CentOSは、サーバー運用における強固な基盤としても広く採用されました。例えば、以下のようなユースケースでその存在感を発揮しています。

1.ウェブホスティング
多くのウェブホスティングサービスプロバイダーがCentOSを標準のOSとして採用していました。理由はその安定性と、Apache、Nginx、MySQL、PHPといった主要なオープンソースソフトウェアとの高い親和性にあります。CentOSは無償で利用可能なため、ホスティング事業者が提供するサービスの価格競争力を維持する助けにもなりました。

2.仮想化環境のホストOS
CentOSは、KVM(Kernel-based Virtual Machine)やXenといった仮想化技術のホストOSとしても最適化されており、仮想マシンの安定稼働を支えました。また、VMwareやOpenStackなどのプラットフォームとの組み合わせにより、クラウドサービス構築にも利用されることが一般的でした。

3.セキュアな環境構築
CentOSは、SE(Security-Enhanced)Linuxを標準でサポートしており、システムのセキュリティを高める手段として重宝されました。これにより、金融や医療といったセキュリティ要件の厳しい業界でも採用されるケースが多く見られました。

開発環境としての柔軟性

CentOSは、開発環境の構築にも広く利用されました。その理由の一つは、RHELと互換性があることで、本番環境を意識した開発が可能だった点にあります。

たとえば、RHELを使用する企業であれば、開発者はCentOSをローカル環境にインストールして開発を行い、そのまま本番環境にデプロイすることができます。この一貫性は、システムトラブルを減らし、効率的な開発プロセスを実現しました。また、広範なリポジトリとサードパーティソフトウェアの対応により、どのような開発ニーズにも応える柔軟性を持っていました。

さらに、コンテナ技術の普及に伴い、CentOSはDockerやKubernetesなどの基盤としても選ばれるようになりました。これにより、最新のクラウドネイティブアプローチを取り入れながらも、安定した環境で開発が行える利点を提供しました。

まとめ

CentOSは、エンタープライズ環境での安定性と信頼性を提供しつつ、コスト効率の高い選択肢として多くの企業運用を支えてきました。サーバー運用の基盤として、また開発環境としての柔軟性を兼ね備えたCentOSは、無償OSとしての枠を超え、ITインフラの要となる役割を果たしました。その功績は、単なる技術的な価値だけでなく、企業の成長を後押しする力となったのです。

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この記事を書いた人

代表取締役 榎本登志雄

これまでITインフラの専門家として、さまざまな業種の顧客に対しITコンサルティングを提供し、延べ300社のサポートを統括。また、地方自治体向けの教育コンサルティングも手掛けており、これまでの経験を活かしたコンサルティングが高く評価され、全国各地で実施している