AMD Ryzenとは?Intelとの違いと選び方を徹底解説!

従来、パソコンのCPUを選ぶ際には、IntelのCore i5やi7が主な選択肢でした。しかし最近は、AMDのRyzen(ライゼン)を検討する方も増えています。「AMDって何?」「聞いたことはあるけどよく分からない」という方もいるかもしれません。今回は、AMDとRyzenについて、できる限り分かりやすく解説してみます。

AMD(エイエムディー)とは?

AMDは、正式名称を「アドバンスト・マイクロ・デバイセズ」といい、1969年にカリフォルニア州で設立された半導体企業です。決して最近現れた会社ではなく、古くから互換CPUを設計・開発してきた実績と歴史があります。

また、2006年にはカナダのグラフィックチップメーカーであるATiを買収し、NVIDIAと並ぶグラフィックチップ設計・製造メーカーとなりました。この買収により、AMDはCPUだけでなくGPU(グラフィック処理ユニット)も開発・製造するようになり、CPUに内蔵されたグラフィック機能も強化されました。

例えば、PlayStation 4やXboxなどのゲーム機にもAMDのCPUが採用されており、その性能と信頼性は広く認められています。

Ryzen(ライゼン)とは?

Intel CPUがCore iシリーズと呼ばれるように、AMDが2017年から展開しているCPUがRyzenシリーズです。当初はIntel Coreシリーズに比べて価格が手頃な点が注目されていましたが、2020年に登場したRyzen 5000シリーズ以降、性能が大幅に向上し、現在のRyzen 7000シリーズ(2024年時点)ではIntel Coreシリーズと同等以上の性能を持つ製品も登場しています。

特にゲーミング分野で高い評価を得ており、同価格帯のIntel製CPUと比較して、性能と消費電力のバランスに優れている傾向があります。過去にはIntel Coreシリーズの一部で設計上の問題が指摘されたこともあり、自作PC市場でRyzenの選択肢が増加する要因となりました。現在Intelは、Ryzenシリーズに対抗するため、Core Ultraシリーズを投入していますが、市場の評価は定まっていない状況です。

Intel Core iシリーズには「i5」や「i7」といったグレードがあるように、Ryzenにも「Ryzen 5」「Ryzen 7」などのグレードがあります。おおまかに言えば、「Core i5 ≒ Ryzen 5」、「Core i7 ≒ Ryzen 7」と考えて差し支えありません。

AMDとRyzenを選ぶメリットとデメリット

Ryzenシリーズは当初、Intel Coreシリーズと比較して価格が手頃な点が魅力でしたが、広く認知されるにつれて価格差は縮小傾向にあります。しかし、同程度の性能を持つIntel搭載製品と比較した場合、価格面で優位な場合も依然としてあります。Ryzenを選ぶメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

一つめのメリットは、CPU内蔵グラフィック(iGPU)の性能です。例えば、ノートPCで3D CADを使用する場合、Intel Coreプロセッサ搭載PCでは、高性能なディスクリートGPU(例:NVIDIA GeForce RTX 4060 Laptop GPU)を搭載したモデルが必要になることが多いです。これらのモデルは一般的にゲーミングPCとして販売されており、重量や消費電力の面で携帯性に課題があります。一方、Ryzenプロセッサは内蔵グラフィック機能が強化されているため、比較的軽作業であればディスクリートGPUなしでも対応できる場合があります。本格的な作業にはワークステーションが適していますが、外出先でのプレゼンテーションなどであれば、Ryzenプロセッサ内蔵のグラフィック機能でも十分対応できる場合があります。

二つめのメリットは、コストパフォーマンスです。IntelはCPUだけでなくチップセットも自社で製造・販売しており、これらのコストがPC全体の価格に影響する傾向があります。一方、AMDはチップセットを他社から調達しているため、結果的にPC全体のコストを抑えられる場合があります。

三つめのメリットは、拡張性です。特に自作PCユーザーにとってのメリットとして、AMDプラットフォームは比較的長い期間、CPUソケットやチップセットの互換性が維持される傾向があります。これにより、後々CPUをアップグレードする際に、マザーボードを交換せずに済む場合があります。業務用途では恩恵を受ける場面は限られるかもしれませんが、個人でPCを長く使いたい場合には大きなメリットとなります。

デメリット

USBと一部共用の接続ポートにThunderboltという規格があります。Thunderboltは、IntelとAppleが共同開発した高速データ転送規格で、データ転送と映像出力の両方に使用できます。Thunderboltを使用するにはIntelへのライセンス料が発生するため、AMDプラットフォームでは搭載されていない、または搭載モデルが少ない傾向があります。しかし、多くの用途ではUSB Type-Cで十分であり、Thunderboltが必須となる場面は限られています。

次に、命令セットについてです。Intel CPUには、特定の処理を高速化するための独自の命令セット(例:AVX-512、AVX2)が搭載されています。アプリケーション開発者はこれらの命令セットを活用することで、パフォーマンスを向上させることができます。AMD CPUも同様の命令セットに対応している場合がありますが、アプリケーションがAMD CPU向けに最適化されているかどうかは、開発者側の対応状況に左右されます。以前はAMD CPU向けの最適化が不十分な場合も見られましたが、近年では改善されています。

もう一つは互換性の問題です。グローバル展開しているソフトウェアでは問題は少ないですが、日本国内のみでニッチな市場を相手にしているソフトウェアの中には、AMD製品を考慮・動作検証していないものが稀にあります。そのようなソフトウェアを利用中で、推奨動作環境に「Intel製CPUのみ」などと記載されている場合は注意が必要かもしれません。

まとめ

ご自身の用途や予算に合わせて、AMD Ryzenも選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。選択肢がIntel製品に限られる状況は、市場の競争を阻害し、製品価格や性能向上に影響を与える可能性があります。

この記事を書いた人

はやさか

シニアコンサルタントとして、IT相談やシステム入替えの提案をしている。前職では10年以上システム運用を経験し、今はNASやUTM、通信機器の案件を担当することが多い。PC自作歴は長く、気づけば6台目。自転車通勤(片道16km)や珈琲のハンドドリップ、猫との暮らしが日々の癒やし。将来は、海外からリモート勤務したい。